[完]Dear…~愛のうた~
「違うのー!!ここは絶対しっとりにさせる!!」
「何言ってるねん、さっきもしっとりにしたやろ」
「それとは違うの!!もっと囁くみたいにしっとりなの!!」
「囁くってなんやねん」

仲良しコンビはまたまた言い合い。

何だか俺らは入りにくい……。

「あ、隆やん」

俺達に気付いてくれたのは真司。

「詩書いたんだけどちょっと見てくれる?」

俺は二人の間にある机にバサッと紙を置く。

「え?もう出来たの!?いつもなら曲から作ってたのに!!」
「何か隆と曲作りやすくてさ」
「なるほどねー……でもどうしよう。せっかく考えたアイデアがいちから作り直しなんて」

そのままガタッと机に倒れ込む杏ちゃん。

その姿を見ると何だか申し訳なくなってきた。

「じゃあ、詩書き直そうか?」
「それはやめとき」

即答で真司が答える。

「この詩ええから絶対に変えんとくわ。俺達がこの詩に合わせてリズム作るから何も心配せぇへんくていいで?」

真司の言葉にホッとする。

「ありがとう二人共」

実彩は二人に笑って俺にもかわいい笑顔を見せてくれた。

そして俺達の今日の仕事は終わり。

ってことでとりあえず部屋から出る。

「んー!!疲れたー」

実彩は出た瞬間大きく伸びをする。

「あ、隆弘お疲れ」

ニコッと笑って俺を見る実彩に俺も「お疲れ」と付け足す。

「どんな曲になるかなー?」
「ま、俺らの作った曲だからいい曲じゃね?」
「うわー、ナルシストー」

俺のことを指差してキャッキャッとはしゃぐ。

子どもみてー……

「ね、隆弘って今日用事ある?」
「え?」

いきなり思いもよらないことを聞かれて変な声がでる。

「いやー、前隆弘と話した時凄い楽しかったから……さ?」

顔を赤らめて恥ずかしそうに俺を見る実彩。

なんでこんなにいちいちかわいいかな……

「別にないけど?今日も話してこうか?」
「本当に!?やったー!!」

目をキラキラさせて飛び跳ねる彼女を見て何だか嬉しくなる。

「じゃあね……今日は「あれ?隆じゃん」

実彩が話している最中に誰かが遮った。

その声を辿ってみると……そこには私服姿の光が不思議そうにこちらを見上げて立っていた。
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