[完]Dear…~愛のうた~
「さっきな、俺達が仲良く喋っていたら実彩ちゃんドア思いっきり開けて入って来たんや」
「……なんで?」
「いきなりあーちゃんに抱きついて隆弘に嫌われたかもって泣きそうな顔してたで?どうかしたんか?」

泣きそうな顔ね……

つか、真司は何であーちゃんって呼んでるんだ?

なんとなく寒気がするから辞めて欲しい……

「別に?ちょっと俺が冷たくしただけ」
「なんでや?」

こいつは聞いたらそのまま聞き続ける嫌な奴。

「光と仲良く話してたから」
「……そうなんや」

真司は何か言ってくると思ったらそれっきり何も話さない。

なんだよ、気になってたくせに……

そう思って再び携帯に視線を移すと

「隆は自覚してるんか?その気持ち」

いきなり訳のわからないことを聞いてきた。

「は?」
「わかってないならええわ。でもこれだけは忘れんといてや。実彩ちゃんは隆のこと勘違いしてるで?」
「勘違いって何をだよ」
「……実彩ちゃんはきっと隆のこと自分のせいやと思ってるで?そしてその理由もよくわかってへん。それできっと隆とあんまり喋れなくなるんや。違うか?」

言われてみればそうだ。

俺が勝手に怒って勝手に逃げて来たんだ。

実彩が誤解するのもおかしくない。

「なぁ、真司。PEACEがレコーディングしている場所ってどこ?」

実彩の誤解は解かないと……きっともっと俺達の溝は深くなる。

「4階の一番大きいレコーディング室やで?」
「サンキュー」

俺はそのまま廊下を駆け出した。

「絶対隆実彩ちゃんのこと好きやろ」

なんて真司が言ってることも知らずに……

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