[完]Dear…~愛のうた~
_______

ーカラン……

缶コーヒーを自販機で買い、
そのまま溜まり場に戻って眠りにつく。

ただ光の言ってたことが嘘だと思いたくて……

_______

「……ん」

目を覚ますと辺りは暗闇に包まれていた。

眠たい目で携帯を開くと
痛いくらい眩しい光が目に刺さってきた。

“19:24”

「もうこんな時間か……」

今日はなぜか暇でどこにも行く用事がなかった。

部屋の電気を点けてテレビを点けると
PEACEの新曲のCMが流れていた。

どうやらこの曲はハワイで撮影したとかどうとか。

何だか旅行気分で行って自由気ままだっとか。

恐らくこの曲はレジャーで
楽しんでいる様子を撮ったんだろう。

赤いオープンカーに乗って歌っている。

俺はやはり実彩に目が行ってしまう。

相変わらずクシャッと笑う笑顔は変わらない。

けれど、見ただけでわかる。

「めっちゃ痩せたな……」

怖いくらい腕が細い。

元々細かったからからか凄い骨が目立っている。

そんな実彩を見てられなくて
缶コーヒーを一気に飲み干して
新しい物を買いに行く為に部屋を出た。

「すぐ飲み終わりそうだな……」

そう思っていつものカフェオレを
2つ買った。

ーカラン……ガン!!

2つ落ちて来たのを確認して
手に取り溜まり場に戻ろうとして振り返った時……

「……!!」

向こう側から歩いてくる彼女の姿があった。

まだ仕事中なのか私服で変装もしないで
片手に薄いピンクの財布を持って
こっちにスタスタ歩いてくる。

まさか……ここに来る?

どうやら彼女は俺に気づいていない様で
足をそのまま止めない。

そして彼女の長い髪を耳に掛けて前を向いた瞬間

「……!!」

大きな目を更に大きくして
バチッと目が合った。

それと同時に彼女の足がピタッと止まった。









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