[完]Dear…~愛のうた~
あれは……夢……?

「みーちゃん、大丈夫?」

ゆかりんを見上げると
いつもの部屋の様子が伺えた。

そして、それと同時に一気に恐怖が肩から落ちる。

安心してからか私は頬が冷たくなっている。

「実彩、大丈夫かって……うぉ……」

私はなんでこんな行動に出たのかわからない。

安心してだろうか……。

久しぶりに近くで感じた香りと温もりに
腕の力をギュッと強くする。

私は今……隆弘に抱きついている。

「よかった……よかった……よかった。
本当によかったよ……」
「……実彩?」

隆弘は驚いたような声を出して唖然とする。

「隆弘……ごめん……。
少しだけ、少しだけこのままでいさせて……」

私は隆弘の胸に顔をうずめると
隆弘はそれに答えるように私の背中に手を回した。

こう思うとお互いが手を回したのは
初めてかもしれない。

そんなことを思いながらも
私は隆弘の胸に体をまかせていた。

________

「ごめん……」
「いや、別に……」

しばらくしてお互い離れると
恥ずかしくて顔が合わせられなかった。

「……体調どう?」
「わかんない……何が起きたのか……」
「……だよな……」

するといつの間にかいなくなってたゆかりんが
私達に気遣いながら部屋に戻ってきた。

「じゃ、俺はこれで」

隆弘が私の元から離れてゆかりんに何かを渡す。

「もう、行っちゃうの?」
「……あぁ、またな?
……実彩の許可が出たらの話だけど」

隆弘は寂しそうに笑って部屋を後にした。

それって……私の言葉、気にしてる?

そう思いながらもゆかりんを見た。

すると、ゆかりんは優しく笑って

「体調どう?」

隆弘と同じことを聞きながら私の隣に座った。
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