[完]Dear…~愛のうた~
「頭ちょっと痛いだけ……」
「そっか、何かあったら行ってね?
すぐ病院連れてくから」
「えー、病院嫌い」
「ワガママ言わないの」

二人で笑ってからの沈黙……

「……どれくらい気絶してた?」
「うーん、2時間くらい?」

ってことは……今、9時くらいか……。

「杏奈……は?」

すると、ゆかりんは私から目を逸らした。

「……」
「ねぇ、教えて?」

何だか嫌な予感がする。

「今みーちゃんの顔見れないって……
責任感じてどっか行っちゃった」
「そっか……」

近くにいればいいんだけど……。

「ねぇ、みーちゃん」
「ん?」
「そろそろ教えて?私に……」

ゆかりんは複雑そうにでも真剣に私を見る。

「みーちやんの過去に何があったのか……」

そろそろゆかりんに話さないとね……

それに、杏奈にも言われたし、
私も向き合ってみようと思うんだ。

あの過去に……

「私ね、幼なじみで小さい時から
ずっと片思いしてた彼氏がいたの」

あいつを思いだすのは嫌だけど……

ゆかりんには言わないと……

__________

これは今から3年前……私が16歳だった時の話。

「おい、実彩行くぞー」
「ちょっと、早いから!!」
「実彩が遅いんだろ?今何時だと思ってんだよ」

あいつは私の斜め前の家に住んでいて、
小さい時からいつも一緒にいた。

高校だって同じだし、
毎日があいつ無しでは考えれない程一緒にいた。

そんな中、私には一人の親友がいた。

「みーさ♪」

ニコニコ笑う彼女。

大きな目、プルッとした唇、
パッツンの前髪に綺麗に編みこんだ編みこみ。

とにかく美人で男性を虜にする彼女は
私の隣にいるだけで鼻が伸びた。

「どうしたの?」
「冷た~い!!
萌(もえ)泣いちゃう~」

その子の名前は萌。

甘い声を出すからか女の子には嫌われていたが
私は嫌いではなかった。

「意味わかんない。
勝手に泣いてれば?」
「出た~ドS実彩~」

そんな会話はいつもおもしろくて
笑いが絶えなかった。

そんな中……

「ねぇ~?
実彩はいつになったら拓(たく)くんに
気持ち伝えるの~?」
「ぐほっ……何?急に……」

思わず食べていたお弁当を吐き出しそうになる。

「え~?
だっていつも拓くんのこと見てるじゃ~ん」

拓くん……正式には拓真(たくま)。

拓真は私が言うあいつ……

萌は私が拓真のことを好きなことは知っている。

< 89 / 207 >

この作品をシェア

pagetop