starting over
どれぐらい眠っていたのだろうか。

まぶたの向こうに、柔らかい春の日差しを感じた。昨日のつないだ手は、指と指をきっちりからませた恋人つなぎになっていた。

休日仕様のほのの手は、いつもより柔らかくて、離したくなくなる。

左手をつないだまま、右手でそっと抱き寄せた。

「ん…」
「おはよう…かな?」

ゆっくりと、ほのがまぶしそうにまぶたを開いた。夢と現の間にいるほののおでこにキスをした。すると子犬のように、俺の胸におでこをすりよせてきた。

そんな甘い幸せな朝に、ふと思い付いた。

「ほの、あのさ。」
「なあに?」
「千葉の相談さ、図書室借りていい?」

ほのはビックリして、目が覚めたようだ。そりゃ、そうだ。進路相談室とか、個室ではなく、誰がいつ来るか分からない図書室で、なんて言われたらビックリするだろう。

「いいけど、でもなんで?」
「なんとなく。進路相談室とかだと、緊張するだろうし。」
「いや、他人に聞かれるリスクの方が嫌じゃないかな?」
「それもあるけど、図書室、落ち着くかなって。」

ほのは怪訝な顔をした。

「正樹さん、私がいるからではなく、落ち着くって思ってます?」
「うーん…そうだな。」

それを聞いたほのは、嬉しそうに、俺にしがみついてきた。

「それならいいですよ。」

珍しく、ほのからキスされた。

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