starting over
どんなに拒んでも、時間は前にしか進まない。その時を、その選択を、少しでも納得して進めるように、今という時に向き合うしかない。

これを伝えてたのは、いつのことだっただろうか。

千葉の感情を、春日の感情を、どこか利用してしまったのではという後悔はある。

けれども…

"その生徒の一ページに金沢先生がいるって、うらやましい。"

あの時のほのの言葉が、自分の選択を支えてくれた。好意をきちんと拒めず、自分をよく見せたいと思う、卑怯でずるい自分の弱さを、しっかり抱えて向き合わなければ。

「千葉くん、進路決まったって聞いたよ。おめでとう。」
「ありがとうございます。」

はにかみと、抱えている問題が入り交じった複雑な表情で、千葉が答えた。

「谷川先生、悪いね。」

ほのはかぶりをふった。

「むしろ、千葉くん、ここでいいの?」
「はい。むしろ、ここのほうがいいかな。」
「そっか。司書室行ってようか?」
「それも、気にしないで。こっちが無理くり時間作ってもらってるし。」
「そっか。」

そういうと、窓際のラグをひいたスペースを使うように促された。堅苦しい相談になりそうなら、なるだけリラックスできるとこがいいかな、と、ほのが気をきかせてくれた。

「大野先生、授業だから、たぶん人来ないかな?ゆっくりしてって。」
「ありがとうございます。」

千葉は、よく図書室に来ていたらしく、ほのも、扱いになれているようだった。ほのが作業に戻ったところで、本題に入った。

「春日のことだろ?」
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