後悔なんて、ひと欠片もない
Little Love Machine
多分、あの時、ファイティングポーズにノックアウトされちゃったのは、私の方……
白馬には乗ってなかったけれど、和史さんは、私にとって初めて現れた王子様だった。
和史さんと次に逢ったのは、2週間後の金曜日の夜だった。
本当は、私と悠子、和史さんとあの時一緒にいた同僚、4人で飲むはずだった。
なのに、悠子は熱を出し、和史さんのツレは親戚に不幸があり、結局、約束の場所に現れたのは、私と和史さんだけだった。
「じゃ、2人で飲むか!」
あっさり、彼はそう言って繁華街へと歩き出した。
「えっ…」
歳上の男性と2人きりで飲みに行くなんて…信じられなかった。
大学に入ってから、男友達は数人出来たけれど。
いつも悠子とばかりつるんでいて、恋には縁がなかった。
和史さんは、頼れるアニキ、といった雰囲気を持った人だったから、私は彼について、飲食ビルの1階にある炉端焼きの縄のれんをくぐった。