後悔なんて、ひと欠片もない


嶽本(たけもと)和史は34歳。

ボクシングのコーチをやっている。

高校生の時は、ライト級で国体に出たほどの人。

大学でもやっていたけど、怪我に泣かされ続けていたとか。


今は、指導者の立場になって、ボクシングのチャンピオン育成に心血を注いでいる。



さっきまで私は、和史さんに抱かれていた。


素晴らしく魅力的な筋肉質の身体に。








私は、両足を揃えてベッドから降りた。


ううん…と腕を上げて、下着姿で伸びをする。

窓を見る。
レース越しの朝日。


窓辺の隅に寄せたイーゼルに振り上げた腕をぶつけそうになるが、セーフ。


茶色の枠のそれには、カンバスは置かれていない。


和史さんと付き合ってからは。



半年前までパレットやら絵の具やら色んな絵筆が並んでいた作業机代りの丸テーブル。

今は違うものが並んでいる。





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