後悔なんて、ひと欠片もない
私は、原田しおん。
美大に通う20歳。
子供の頃から絵を描くのが大好きで、図工や美術の成績だけは良かった。
もちろん、中学、高校と美術部に入っていた。
毎年何かのコンクールに応募して、油彩や水彩画でいろんな賞を貰った。
絵だけが私の特技。
画家になるのが夢だった。
だけど、静岡から上京した私の夢は大学に入学すると同時に粉々に打ち砕かれてしまう。
そこには、私より百倍も千倍も才能と環境に恵まれた若者達が集っていたのだから。
嫉妬する気にもならないほど……
恵まれた者。
だけど、鬱々としていたわけじゃない。
すぐに気持ちを切り替えた。
芸術家になれなくても、美術の先生になれればいい。
それで、故郷の両親は充分喜んでくれる。
人付き合いの苦手な私にも、親友が出来た。
山梨出身の金沢悠子(かなざわゆうこ)。
類トモで姉妹のような私達は、毎日つるんだ。
合コン、サークル。
悠子と一緒に参加した。