溺愛御曹司に囚われて
身体を預ける私の髪を、高瀬の手がゆっくりとなでる。
彼の腕に包まれて目を閉じれば少しずつ落ち着いてきて、いつものように目の前の高瀬だけを感じて心を満たすことができる。
私の涙が止まったのを確認して、高瀬が柄にもなく申し訳なさそうに口にした。
「ごめん。やっぱ昨日の俺、暴走してた? さすがに玄関で盛ったのは謝る」
「ふふ、ほんとに違うから。でも、昨日のことは反省して」
ショボンとした高瀬がおかしくて笑みをこぼすと、彼はようやく安心したようだった。
私をギュッと抱きしめたままぎこちなく歩いてベッドまでたどり着き、そのまま倒れ込むようにして横になる。
「じゃあふたりで休憩。俺も疲れたし。もう今日は動けねえよ」
「一日中家でダラダラしていたじゃない。ちょっと皿洗いしただけでしょ」
高瀬が私を心配していることがわかるから、私は文句を言いつつ彼の身体に身を寄せる。
それに応えるように、高瀬はおでこにかわいいキスを落とし、一ミリの隙間もないように私を抱き寄せた。
その夜、高瀬は私を優しく抱きしめたまま、私が眠りにつくまでそっと髪をなでていてくれた。
だけどそうされるほどに、他の女の人にも同じようにしている高瀬が瞼に浮かぶ。
彼がいつまでも私だけにこうしていてくれるなどと、愚直なほどに信じていられた私には、もう戻れなかった。