溺愛御曹司に囚われて

自分の弱々しい見た目に反して、実は一度決めたら梃子でも動かない頑固さがあることは自覚しているつもりだ。
私の外見に唯一それが現れている部位があるとすれば、さして大きくもないのに猫のようで印象的だと言われる目であろうか。

どちらにしろ、ひとつひとつの要素は強くて色っぽいのに、それぞれが絶妙に配置された端整な顔立ちをしている高瀬の方が、私より数倍綺麗だ。

彼には、隠しきれない品位というものが備わっているのだ。
彼がどんなストレートな言葉でそのときの欲求や感情を表現してきても嫌な気分になったことがないのは、そのせいだと思っている。


「小夜、顔上げて。もうほんとに待てない」


高瀬の器用な長い指先が顎を持ち上げる。見上げた先で、いつもはキリッとしたまっすぐな眉が、困ったようにハの字を描いていた。


「おかえり、高瀬」


焦らすように、彼の薄く形のいい唇の上でささやく。せめてもの仕返しである。

私は彼の喉元が飢えから微かに上下したのを認めてから、彼のキスを待ちわびた自身の唇をそっと差し出した。

初めは優しく触れ合った唇も、互いの不足を満たすために、次第にもっと深くを探り合わなければならなくなってくる。
熱い手のひらが背中をなで、やがて部屋着の隙間に潜り込んできても、それを止める気にはなれなかった。

帰って来てそうそう玄関で触れ合うなんて、一時も離れていられない付き合いたてのカップルみたい。
頭の中で私の理性がため息をついたけれど、私は直接肌をなぞる手を制止する代わりに、高瀬の着ているスーツのジャケットに手を掛けた。


「ヤバい。やっぱ我慢なんてムリだった」


高瀬の吐息交じりのささやきがさらにふたりの熱を上げ、私たちはそのままそこで愛し合った。
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