chu to hug
「亜樹、…俺、結婚するんだ…。」

抱きしめられたままじゃ…
余計に…わかんないよ。
私の誕生日だし、おめでとうも、
幸せになってとも言いたくない。

私の誕生日だから…これから…
私が幸せになるんだから…。

何も言わない私のカラダから
そっと離れた耕輔の腕を、
じっと確認して、荷物を持って
…静かにお店を出ることにした。

最後、耕輔に何を言ったのかも
覚えてなかったけどもしかしたら
じゃぁまたね…って…
言ってしまったのかもしれない。

またね、なんかあるわけないのに。

ズルイのは、耕輔じゃなくて…
私の方だったかもしれない。

耕輔からの何度かの着信もメールも
…全部受け取る携帯を、ただただ
見ているだけにしていた。

誰より、耕輔が大好きだったのに
耕輔のコト、嫌いになりたくないよ。

またヒトリになりたくないときは
あのバーに行くのかもしれない。

私と耕輔のコトを…何もかもを
知ってくれているバーテンの男性が
私を優しく抱きしめてくれる。

「亜樹さん、俺じゃ…ダメですか?」
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