ねぇ、先生。

いつもはこんな近くに座ってるんだ。

先生が一生懸命絵を描いてる姿を、あたしがジッと見つめる。

たまに先生が喋って、あたしがそれに応えて。先生はふにゃりと笑う。

そんな空間が好きだった。

今もその気持ちは変わらない。


引き出しを開けて輪ゴムを探してくれてる先生の後ろ姿を見つめる。

……いくら先生に見えなくても、この人はうちの学校の教師。

それだけは覚えておかなくちゃならない。

……なんて、こうして美術室に何度も通ってる時点で、先生のことを教師だなんて思ってないくせに。


「んー、ねぇなー」

「…ないならいいですよ?」

「ダメ、ちょっと待って」

自ら望んでここに来たはずなのに、今すぐにでもここを出たくなった。
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