ねぇ、先生。


先生が優しかったのはあたしがたまたま絵を気に入ったから。

絵を描く間の話し相手だったから。

それ以上でも以下でもない。

先生にとってあたしはあくまで″生徒″。

大勢いるうちの1人で、きっと特別扱いしてたわけでもないんだろう。


雨が降ってるから、向こうの校舎からあたしの姿は見えない。

泣くにはいい環境だった。

泣くのは今日だけ。

せっかく貰ったポスターも、涙ですっかり滲んでしまった。

そんなことを気にしてられないくらい、心が痛かったんだ。

大事にしてと言われたのに、全然大事にできてない。

ジワジワと滲んでいくポスター。

それすらも涙で視界がボヤけてハッキリ見えない。


こんなに泣いたのは初めてだった。

…それくらい、先生が好きだった。
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