ねぇ、先生。

あれ、何の絵だっけ。

そっか、先生は何を描いてるのか聞いても一度も教えてくれなかった。

大きな桜と、人が2人。

あたしが分かるのはそれだけ。


先生の声を聞きながら、ゆっくり教室のドアを閉めた。

気にしないなんて思ったそばから先生のことを気にしてる。

声だって誰のものよりハッキリ耳に届くし、人がたくさんいたって見つけられる自信がある。

…気にしてなきゃ、そんな風にならない。


体育準備室までゆっくり歩けば中村さんの言ってた時間になる。

時間が余ってたとしても、もう一度あの教室に入る勇気はなかった。

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