ねぇ、先生。
こうして中村さんに言えたのは、他の先生とは違うって分かってたから。
「高校生活なんて一瞬だぞ。」
「おじさんみたいだよ。」
「うるせぇ。…相手が教師でも、好きになったなら仕方ない。精一杯楽しめ。」
中村さんはそれだけ言うと、立ち上がってストップウォッチとか、陸上競技に必要なものを纏め始めた。
「部活行くの?」
「当たり前だろ、顧問なんだから」
体育準備室を出て行く中村さんの後について、あたしも出た。
「咲良、大学調べとけよ」
「はーい」
「それと、あからさまに篠原先生避けんのやめろよ」
「…分かった」
少し間があったのを聞き逃さなかった中村さんは、呆れたように笑う。