ねぇ、先生。
「茉央、帰ろっか」
「んー、帰る」
こうして今日も当たり前みたいに梨花と一緒に下校してしまうんだ。
それが積み重なっての今。
明日、また明日と思っているうちに、梅雨が終わって夏が来た。
湿気てた空気はカラッとして日差しも強くなってきたし、少しだけど蝉の鳴き声も聞こえてくる。
………完全に夏。
「俺もかーえろ」
もうほとんど人がいなくなった教室を出ると、開いた窓から微かに野球部の声が聞こえてきた。
美術室にも聞こえてるのかな。
「咲良ー」
そういえば今日は木曜日だ、なんて思いながら声がする方を見ると、そこには中村さんがいる。
「何?」
手にはプリントを何枚か持ってて、近づいてくるなりそれをあたしに渡す。