ねぇ、先生。

この道のりを歩くのは1ヶ月ぶりくらい。

変わったのは見える景色と、空気と、あたしと先生の関係。

前ほど足取りは軽くない。

胸の前に抱えた資料をギュッと握ると、クシャリと音がした。

慌てて手を緩めるけど、少しよれてしまった資料は元に戻らない。


「はぁ…」

そんなに距離があるわけじゃない美術室。

少し歩いただけなのに、もうすぐそこまで迫っていた。

前はもっと遠くなかったっけ?

…気持ちの問題かな?


少しでも涼しくするために、と開けられた窓からは、野球部の声が聞こえてくる。

どうしよう、来ちゃった。

この中には先生がいる。

足がピタリと止まった。
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