ねぇ、先生。

完全に止まってしまった足は、いつもの数十倍も重たく感じる。

ジワリと汗が滲んだ。

好きな人に会いに行くだけなのに、どれだけ体力使ってるんだって話だよ。

…そんなに、身構えなくても。


少しずつ近づいて、ドアに手を掛ける。

ヒンヤリとした感触。

左手に持った資料は、所々グシャグシャになってた。


―ガラッ…


勢いで開けてしまった。

それも目を閉じたまま。その上俯いてて中は全く見えない。

だけど、美術室独特の絵の具の匂いはすぐに感じた。

………人の気配はしないけど。


「…あれ…」

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