ねぇ、先生。
「まぁ、それなら仕方ねぇだろ。好きになった女がたまたま着任した学校にいたってだけだし。」
中村さんの口から″好きな女″なんて言葉を聞くと思わなかった。
…その前に、先生がここに来る前からあたしのことが好きだったってことに驚いてる。
何で?そんなキッカケあった?
話したこと、なかったはずなのに。
「咲良、お前ほんとに気をつけろよ?」
中村さんがホットコーヒーの缶のプルタブを開けると、真夏には似つかわしくない湯気が出てくる。
「気をつけるって?」
「篠原先生との関係、絶対誰にも知られんなってことだよ。」
ホットコーヒーを一口飲んで苦い顔をした中村さんは、グラウンドへと歩き出そうとする。
「…気をつけるね」