ねぇ、先生。


もうすぐ夏休みが来て、あたしは少しの間学校に来なくなる。

きっと美術室は美術部が使うだろうし、先生も顧問だから忙しいはず。

…会う機会が減るんだ。


―ガラッ…


数日ぶりに美術室のドアを開けると、やっぱり絵の具の匂いがした。

そして数十秒後、その奥のドアが開く。

そこから顔を覗かせるのは、あたしを見つけて嬉しそうに笑う先生。


「やっと来た」

先生はあたしがこうやって久しぶりに来ると、いつもこんな風に嬉しそうに笑う。

まるであたしのこと待ってたみたいに。


「先生、これあげる」

「あ、差し入れ?」

「うん、前に約束したから」

美術準備室にあたしを招き入れて、いつもと同じように木の椅子に座った。

大きなキャンバスの絵は、少しずつ描かれてるように見えるけど、何だかあまり進んでいないようにも見えた。


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