ねぇ、先生。

夏休みも先生に会えるって考えると、長い休みも嫌じゃなくなった。

むしろ、他の生徒がいない分先生を独り占めできるってことだよね。

思わず笑みがこぼれた。そんなあたしを見て、先生も笑う。


「ダメだわ俺。今顔の筋肉緩みすぎて先生らしい顔できない」

優しい目はちゃんとあたしだけを見てて、スッと伸ばした手はあたしの頭をポンッと優しく撫でた。

先生の手が好き。

今はあたしだけを見て、こんなに愛おしそうに触れてくれるから。


「ねぇ、先生…」

気になったことを聞こうとした。

だけど途中で言葉を止めたのは、微かに話し声が聞こえてきたから。

それが聞こえてきたあとすぐに、ガラッと音がした。


「やべ…」

先生は小さく呟いて、あたしの手首をグイッと引っ張る。されるがままについていくと、棚の影に押し込められる。

背中には壁。目の前には先生。

突然のことに頭がついていかなくて口を開きかけると、先生が首を横に振る。
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