ねぇ、先生。
「あれー、先生ー?」
複数の女の子の声が聞こえてきて、心臓がバクバクと音を立てる。見つかるかもしれないってことと、先生との距離に。
掴まれたままの手首から先生の熱がジワっと伝わってくる。
行き場を失ったもう片方の手は、先生のシャツをギュッと掴んだ。
急すぎる。いきなりすぎる。
改めて状況を把握すると、もう壊れちゃうんじゃないかってくらい心臓が跳ねてて息がしづらい。
「美術準備室じゃない?」
「あ、そっか。」
なんて声が聞こえてきて、不安はピークに達した。こっちに来る。
足音はだんだん近づいてきてて、すぐにドアノブを回す音が聞こえてきた。
―ガチャッ…
「先生ー?」
死角になってるとはいえ、中まで入ってこられたら見つかるかもしれない。
怖くて先生の服を掴む手に力が入った。
それに気づいた先生が、あいてる手であたしをギュウッと抱きしめる。
「あれ、いないじゃん」
「えー、夏休み前に会いたかったのに」
「先生人気だからねー」
「あのルックスと性格でモテないわけないでしょ、生徒にも告られてるって」