ねぇ、先生。

「なんて言うか……今までは結構緩い付き合いが多かったんだよね。来るもの拒まずって感じで」

昔の話を聞くことになるとは思わなかったけど、先生が自分の口から話してくれてよかったと思う。

他人の口から聞くよりずっといい。


「自分から好きになった子と付き合うってことがなくて、基本向こうからだったから。好きじゃない子とも付き合ってた」

先生の方が何歳も年上なんだ。

こんなことがあったって仕方ないと割り切るしかないってことは分かってる。

だって今さらなんだもん。泣いて先生を責めてもそれが消えるわけじゃない。


「…ごめん、聞きたくない?」

頬をそっと撫でる手が優しくて、気を抜くと今にも涙が出そうだった。

特定の女の子の話をしてるわけじゃない。複数の、過去の女の子たちの話。

先生は前に言ってた。あたしの昔の話を聞くのは嫌だって。元カレの話を聞くのは嫌なんだって。

あたしも嫌だよ。

嫌だけど、ちゃんと聞かずにこのまま気にして付き合っていくのはもっと嫌なの。
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