ねぇ、先生。

「そんな風にしか付き合ってこなかったから、全然分かんないんだよ」

好きな子を大切にするってことが、どういうことなのか。

先生の言った言葉に、あたしはどう返せばいいのか分からなくなった。

だって、今までそんな素振りを見せなかった。きっと女の子に慣れてるんだろうな、と思っただけで。


「んふふ、ごめんねこんな話して。」

あたしの困った顔を見て先生は、いつもの調子に戻ってふにゃんと笑う。

だから首を横に振って、先生の手をギュッと握り返した。大丈夫だよ、って。


「泣きそうだね」

先生がポンッと頭を撫でてくれるから、何でか分からないけど涙が出そうだった。

「…泣かないです」

「ほんと?目ウルウルして可愛いけど」

「…ばか」

「んふふ、ごめんね」

今日先生は何度謝っただろう。

大丈夫だよ先生、だってあたし決めてたもん。前の人たちのことなんて気にしないって。

だからそんな困った顔しないでよ。

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