ねぇ、先生。
しばらくして、廊下を歩く足音が聞こえてきた。多分先生だ。
そのあと少しして、美術室のドアが開く音が聞こえてくる。
―ガチャ…
「うわ、やっぱここ暑いね」
ドアを開けた途端に言った先生。
ムワッとした空気が顔を撫でたらしい。手でパタパタと顔を扇ぐ。
「ん、どっちがいい?」
オレンジジュースとカフェオレを差し出した。オレンジジュースを指差すと、先生はふにゃんと笑う。
「オレンジジュース好きなんだね」
「え?」
「ここに来たときいつもオレンジジュース飲んでるでしょ。」
確かに考えてみれば、ここに来たときはいつもオレンジジュースだった。
意識してたわけじゃないけど、自然と好きなものを選んでたんだろう。
「先生もカフェオレ好きなんだね」
「ん、まぁコーヒーよりはね」