ねぇ、先生。
完全に先生のペースだ。
あんなに不機嫌で無愛想だった加地くんが少しだけその表情を崩したように見えた。ほんと、少しだけ。
「何の担当?体育?」
「俺ね、美術の教師なんだ。」
「美術?見えねー。」
あ、あたしと同じこと言ってる。
そうだよね。先生絵の具が付いてなきゃスポーツ出来そうな男の人だもん。美術の教師には見えないわ。
「それもね、よく言われんの。」
美術の教師としては致命的だよね。そう言ってふにゃんと笑った。
緩いな、ほんと。
「あ、もう余ってんの少ないよ。自動的にリレーになっちゃうけどいいの?」
「リレーの方がやりがいあるって言ったのあんただろ。」
「じゃあ出るんだ、リレー。」
しぶしぶながらも頷いた加地くんを見て、先生は嬉しそうに笑う。
「白城くん、加地くんリレー出るって。」
「んー、分かった!」