ねぇ、先生。
「咲良、加地、早く並べー。」
全く近づいてこない加地くん。どうやってフォークダンスしろっていうの?
中村さんは早く並べと急かしてくる。
男女ペアになった他のクラスメートは、もうすでに円になって並んでた。
「加地くん、とりあえず並ぼう。」
何でこんなに気を遣わなきゃならないの。ていうか、先生はどうやってこの人の心に入っていったわけ?
そういうところはほんとに尊敬するし、あたしにもちょっと分けてほしい。
「…俺、別に怒ってないから。」
「え?」
中村さんがステップを説明し始めた時、加地くんがそう呟いた。それを言った加地くんの表情は明らかに不機嫌だけど。
「咲良、だっけ?」
「うん、咲良茉央。」
「俺全然フォークダンス分かんねぇから、教えて。」
そう言われて、思ったの。
加地くんは不機嫌なわけじゃなくて、多分人見知りなんだろうなって。ちょっと伝えるのが下手なだけ。