ねぇ、先生。
咄嗟に言葉が出なかった。
先生の名前が出てくるなんて思ってなかったから、予想以上に動揺してる自分を落ち着かせようと下を向く。
先生に好きな人がいるだなんて、どうして加地くんはそんなことに気づいたんだろう。
あたしが言うのもなんだけど、先生はほんとに読めない人だもん。油断してうっかり、なんてことはないと思う。
「……彼女がいるってこと?」
「さあ、そこまでは知らねぇ。」
ダメだ。加地くんと話してるといろいろバレちゃいそうで怖い。
先生、どうしよう。
十分に気をつけてても、加地くんにはバレちゃいそうな気がするんだよ。
「咲良?」
名前を呼ばれてハッとする。
ダメだ、こんなとこ見せたら勘付かれる。絶対に勘付かれちゃいけない。
「っ…もう体育終わっちゃうね」
「あー、うん。」
「練習、頑張ろうね」
上手く作れてるか分からない笑顔でこう言うしかなかった。あたしにはそれしか、出来なかった。