ねぇ、先生。
先生の前には中村さんが並んでて、2人で楽しそうに話してる。
入ってきたのは先生の方があとだけど、歳は同じくらいだから親近感が湧くんだろう。中村さんすごい笑ってるし。
見た感じ若い先生ばかりで、生徒が相手だからって手を抜いてない感じが伝わる。特に中村さん。
あの人、去年の体育祭でアンカーを務めて見事にダントツで1位を持っていってしまったから。
「まーおっ!」
「わっ…!」
後ろから抱きつかれて体がよろける。
さっき走ったばかりなのに梨花は全然元気で、ここまで走って来たらしい。シロと加地くんがついて来れてない。
「篠原先生アンカーなんだね」
「うん、中村さんに任されたんだって」
「よかったじゃん。茉央にとってはラッキーっていうか、こんなに堂々と先生のこと見れる機会あんまりないでしょ。」
「でもここにいる生徒はみんな見れるってことでしょ?また先生人気になっちゃうよ。」
特に女の子。先生が足遅いわけないし、何となくほんとに1位になっちゃいそうな気がするから。
あたしを見てクスクス笑う梨花が、あたしの頬を指でつついて「ヤキモチ」なんて言ってくる。