ねぇ、先生。

「可愛いねー、先生が惚れるわけだわ。」

からかうような口調に急に恥ずかしくなって、グラウンドへ視線を戻す。

ちょうど並んだ先生がこっちを向いて、タイミング良く目が合う。ほんとに、惹かれあったみたいに。

ここからでも分かるくらいにふにゃんと笑った先生は、小さく人差し指を立てて口パクで「がんばる」と言った。

あたしが1位を期待してるって言ったことを覚えてるんだ。


「愛されてるねー」

「…見てたの?」

「あんなに堂々とやられたら見えちゃうよ。先生あたしのことなんて見えてないみたい。」

幸せそうに笑うよね。なんて言って先生を指差す梨花。

中村さんと話して笑ってる先生は、確かにほんとに楽しそうだし、梨花の言う通り幸せそうに見える。


「あ、始まるよっ」

第一走者がスタートラインに立ったのを見て、梨花はもっと近くで見ようとあたしを連れて前に出る。

引っ張られて少しだけ視界が歪んだ気がした。一瞬頭がクラッとする。

……暑いとこにいたからだ。

< 271 / 451 >

この作品をシェア

pagetop