ねぇ、先生。
「可愛いねー、先生が惚れるわけだわ。」
からかうような口調に急に恥ずかしくなって、グラウンドへ視線を戻す。
ちょうど並んだ先生がこっちを向いて、タイミング良く目が合う。ほんとに、惹かれあったみたいに。
ここからでも分かるくらいにふにゃんと笑った先生は、小さく人差し指を立てて口パクで「がんばる」と言った。
あたしが1位を期待してるって言ったことを覚えてるんだ。
「愛されてるねー」
「…見てたの?」
「あんなに堂々とやられたら見えちゃうよ。先生あたしのことなんて見えてないみたい。」
幸せそうに笑うよね。なんて言って先生を指差す梨花。
中村さんと話して笑ってる先生は、確かにほんとに楽しそうだし、梨花の言う通り幸せそうに見える。
「あ、始まるよっ」
第一走者がスタートラインに立ったのを見て、梨花はもっと近くで見ようとあたしを連れて前に出る。
引っ張られて少しだけ視界が歪んだ気がした。一瞬頭がクラッとする。
……暑いとこにいたからだ。