ねぇ、先生。
「シロ」
「何だよ」
「…バカだね」
「うるせー。」
シロがフッと笑って、仕返しだと言わんばかりにあたしの額にデコピンをしたとき、音楽が流れ始めた。
一生懸命覚えたステップでシロについて行く。上手くリードしてくれるから、間違えることはなかった。
ものの何十秒かで最初のペアとのダンスは終わってしまう。
ペアが変わってしまう前にちゃんと言わなくちゃ。と思ってシロが近づいたときに言った。
「シロ、ありがとね」
照れくさそうに笑ったシロは、満足そうに次のペアの子の元へ行ってしまった。
よかった、加地くんとは逆方向に回っていくから絶対にペアにならない。
だけど先生は?
シロと話すことに夢中で先生がどこにいるか確認することが出来なかった。
回ってくればいいな、なんて思ってたけど、踊っているうちに頭がクラクラし始めて、気分が悪くなる。
そんなに長くないはずだから耐えられると思ってたけど、予想以上にしんどくて何度もステップを間違えた。