ねぇ、先生。

「中村さん…」

「何だお前、顔赤いな。」

心配そうにあたしを見るけど、音楽に合わせてちゃんとリードしてくれる。

そのおかげでさっきまで間違いだらけだったのに、間違えることなく踊れた。


「そろそろ終わるな。」

「うん、そうだね」

「次、篠原先生だけど。」

「えっ…」


中村さんの言葉に慌てて振り向くと、少し先にいた先生がもう次のペアまで迫っていた。

もしかしたら、先生が最後かもしれない。

そう思うとなぜか動揺してしまって、見事にステップを間違えた。中村さんはそれを見て笑う。


「ほんと、お前ラッキーだな。」

「ラッキー?」

「高校最後の体育祭でいい思い出作れんじゃん。良かったな。」

去り際、あたしの頭をポンッと撫でて笑ったあと、お辞儀をして次のペアの子の手を取った。

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