ねぇ、先生。

それを見てたあたしの手をキュッと掴む優しい手の感触に、意識が一気に引き戻される。

「回ってきたね。」

ふにゃんと嬉しそうに笑う先生。

何だかものすごく嬉しくて、あたしも同じように頬が緩んだ。


「回ってこないかと思った。」

「俺も。」

俺も、なんて言ってるけど先生からは、回ってこないかと思って焦った様子なんて全く伝わってこない。

「うそ、そんな顔してない。」

「んふふ、そう?」


そんなマイペースな先生を見てると、午前のリレーのときの先生が嘘だったみたいに思える。

だってあのときの先生はこんなにゆるゆるしてなかった。

「俺、何となく回ってくるような気がしてたから。やっぱ勘って当たるね。」

あぁ、だからか。

回ってくるって思ってたからあたしとは違って落ち着いてたんだ。

< 292 / 451 >

この作品をシェア

pagetop