ねぇ、先生。

今日は、美術室に行こうと思ってた。

あれから篠原先生とは一度も話せてない。


何度も行こうと思ってたけど、バイトがあったし……何より勇気が出なかった。

来てもいいとは言われたけど、何度も行ってたらバレちゃうかなって。

それに、この気持ちが増すのを止めなくちゃならないわけで…ていうかむしろなくさなきゃならない。


「茉央、今日一緒に帰る?」

「あー、ごめん梨花。あたし今日用事あるから先帰ってて」

「そっか、分かった」


美術部の子達がいるのかな。

あたしが行ったら、きっとみんな何で?って顔をするはず。

あたしが美術室に行くのは、ただ篠原先生に会いたいから。

…そんなこと言えるはずもないけど。


人がいなくなった教室の窓から美術室が見える。

あの中に篠原先生がいる。

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