ねぇ、先生。

「やっぱりあたし分かりやすいみたい。」

「加地くんにそう言われた?」

そうじゃない、と首を横に振ると、先生は俯いたあたしの頭を優しく撫でる。

いつだって変わらない。この手に撫でられると安心した。


「加地くんにね、あたしの彼氏は先生なんじゃないかって聞かれたの。」

「…それで、茉央ちゃんは何て言ったの?」

「何も言えなかった。否定も肯定も出来なかったの。でも多分、加地くんはあたしの反応を見て気づいたんじゃないかな」

先生はあたしのことを責めるわけでもなく、そっか。と呟いて赤いままのあたしの頬を手の甲で撫でた。


「先生、怒らないの…?」

こんな風に聞いて、先生が怒らないことは初めから分かってるくせに。

「怒らないよ。加地くんがちょっと勘がいいってだけだし。それは茉央ちゃんのせいじゃないよ。」

改めて実感して怖くなった。

こうやって少しずつバレていって、いつか一緒にいられなくなる日が来るんじゃないかって。


「それに、俺も油断しすぎた。ちょっと浮かれすぎてたのかもね。」

「どうすればいい…?」

「…今まで通り、茉央ちゃんは何も気にしなくていいよ。とにかく今日はゆっくり休んで。あんまり考え過ぎないように。」
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