ねぇ、先生。

「もう少しだけいようかな」

もう一度座り直して、ふにゃんと笑った。

「…いいの?片付けがあるって…」

「俺ももう少し一緒にいたいから」

あたしがワガママを言ったからこうして優しい嘘を付いてくれてるんだろう。

少しも困った素振りを見せないのは、あたしが気にしないように。やっぱり自分でも子供だな、と思う。


「そういえば、フォークダンスちゃんと踊れてたよね。」

「んふふ、先生のときは間違えなかったんだけどね、ほんとは何度も間違えたんだよ。」

「そうなの?加地くんと練習してたのに」

「本番は加地くんじゃなかったし、気分悪くてそれどころじゃなかったの。」

「ペア誰だったの?」

先生見てないんだ。

何も考えずに、シロだよ。と言うと先生は少し間を開けてそっか、と言った。


「最後が俺でよかった」

「何で?」

「茉央ちゃん倒れたから。目の前で他の人とあんなに密着されたら俺、触んなって言っちゃってたかもしれない。」

そんな独占欲を剥き出しにしたことを言ってるくせに、いつもみたいにふにゃんと笑ってるから本気で言ってるのか冗談なのか分からない。

本気だったら嬉しい。

あたしばっかり嫉妬してるんじゃないってことだから。
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