ねぇ、先生。
嫉妬かと聞かれると、素直に頷ける。
これは紛れもなく嫉妬で、それも先生の立場を考えればどうしようもないことだと分かってるのに、そんな風に思ってしまってる。
…ただのワガママな感情だ。
「梨花ー、今日どうする?」
「ごめん、あたし今日用事あるから帰るね。バイバイ、茉央」
あたしに手を振って出て行った梨花。
…シロと加地くんと3人だと少し気まずいんだよね。シロはともかく、加地くんは特に。
加地くんの様子を見ればあたしに対して何かを思ってるのは明確で、それを言ってこないのは彼なりの優しさなのかもしれない。
今だに火曜と木曜は美術室に通ってる。加地くんはそれを知ってか知らずか、勉強をするために残るのはそれ以外の日だけだった。
「シロ、ここ分かんない。」
視界の隅に映る囲まれた先生の姿を消すように、問題集に向き直る。
見たくない。
だけど、そう思ってることを先生に言うことは出来ない。
先生は優しいから、きっとあたしに気を遣って女子生徒と話す機会を減らすだろう。それはダメだよ。
だって先生は教師なんだから。それが仕事なんだから。それをやめてほしいだなんて、あたしには言えない。