ねぇ、先生。
「咲良、聞いてる?」
「えっ…あ、ごめん…」
シロの説明をキチンと聞いてなくて、呆れたシロにコツンと頭を小突かれた。
「説明してんだからちゃんと聞けよなー」
「ごめん、ボーッとしてた」
ガヤガヤとしていた教室からは少しずつ人が減っていく。それぞれ塾に行ったり、家で勉強するために帰ったり。
人が減ったから自然と先生の声もよく聞こえるようになって、女の子と話してるだけで胸が痛む。
これって重症だ。
前はこんなことなかったのに、あたし最近すごく欲張りになった。
「あ、俺もう行かないと。」
先生のそんな声が聞こえて、なぜかホッとした。女の子との話し声を聞かなくて済むからかな。
美術部の活動がある日だからだろう。先生は少し焦ったように教室を出て行った。
人気なのは元々だけど、やっぱりあの体育祭での一件で更にそれが増したように思える。
それがすごく嫌だった。