ねぇ、先生。

自然と足は美術室に向かう。

生徒に見られるのはマズイような気がして、コソコソ動く。

やましいことなんてない…はずだけど。


ほとんどの生徒が部活に行ったり帰ったりしたから、校内は静まり返ってる。

グラウンドの方から野球部の声が微かに聞こえてきた。

ゆっくりゆっくり歩くけど、足音はしっかりあたしの耳に届く。


ちょっと話すだけ。

会うたびにドキドキしてちゃマズイから、慣れなきゃならない。

篠原先生はあたしの好きな人である前に、この学校の教師であり、うちのクラスの副担任なんだから。

今ならまだ引き返せる。


…引き返すなら今のうちだよ。

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