ねぇ、先生。
「白城、お前が言ってた問題集あったけど取りに来るか?」
「おっ、中村さんさすが!取りに行く!」
先生が出て行って少し経って、中村さんがシロを呼んだ。どうやら前から言ってた問題集の話らしい。
ちょっと言ってくる、と言ってシロは中村さんについて出て行った。
当然、あたしは加地くんと2人。
少しずつ確実に減っていくクラスメイトに、心の中で焦ってた。
教室内に完全に2人きりになるのは抵抗があった。だって、こんな経験今まで一度もない。
2人になって何も言ってこないような人じゃないって分かってるから、この状況が怖いんだ。
だってもう誤魔化せる自信はない。
あたしにこの人を騙せるだけの嘘がつけるわけがないから。
最後の生徒が出て行って、教室内はシーンと静まり返った。外からは部活をしてる後輩たちの声が聞こえる。
シャーペンが紙を滑る音だけがこの空間にはあって、加地くんはあたしの緊張なんてまるで気づいてないみたいに計算式を書いてた。
だから、もしかしたらあたしが意識しすぎただけだったのかな、なんて思ってあたしも計算を進める。
シロが早く戻ってくればいい。問題を解きながらずっと思ってた。