ねぇ、先生。

｢咲良の彼氏は蓮くんだってことでいいんだよな？｣

もう誤魔化しもせずに直接、あたしをジッと見つめて加地くんは言った。

だから思わず顔を上げてしまって、あたしの動揺は加地くんにしっかり伝わったらしい。


｢…加地くん、そんなこと聞いてどうするの？もし仮にそうだとして、だったら何なの？｣

これが、精一杯の反抗。

もうこのことには触れないで。

だってあたしが先生と付き合ってるって知って、加地くんに何の得があるの？


｢言っただろ。｣

｢え？｣

｢蓮くんには渡さないって。相手が教師なら尚更、遠慮しないよ。｣

もうほんとに、一番バレちゃいけない人にバレてしまったのかもしれない。

加地くんの言ってる意味があたしの思ってることと同じなら、全く理解出来ない。

だって加地くんがここに来てまだ少ししか経ってないのに、先生に譲れないほどあたしを想ってくれてるってことでしょ？

どうして？あたしは加地くんに好かれるようなことをした覚えはない。


｢咲良、幸せになれないって分かってるんだよな。｣