ねぇ、先生。

何も言わないあたしを見て、加地くんは構わず言葉を続ける。

「だったら俺を選んで。」

「…加地くん…何言ってるの」

「絶対後悔させない。」

シャーペンを握ってるあたしの手をキュッと掴むと、なぜか加地くんから目がそらせなかった。

…あぁ、もう。

だから2人きりになりたくなかった。


「…ちょっと、待って、加地くん…」

あたしをジッと見つめる加地くんの目に迷いはなかった。

本気だってことは見れば分かる。

だからこうして戸惑ってるし、本気だからこそ何て言っていいのか分からない。


「咲良」

握られた手も振りほどけないまま。

強い視線からも逃げられないまま。

「俺を選んで。」

加地くんの言葉に頷くことも首を振ることも出来なかった。

ただ、ずっと合っている強い視線が心をグラグラと揺さぶる。

もう、ほんとに……


―ガラッ…

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