ねぇ、先生。

「…シロ」

「ん?どした?」

問題集を手に抱えたシロが戻ってきて、振り返ったあたしを見てピタリと止まった。

「…ううん、何でもない。」

シロが戻ってきたのと同時に離れていった加地くんの手。まだ感触や温かさは微かに残ってる。


「何だお前、全然進んでねぇじゃん。」

「分からなかったの。シロに教えてもらおうと思って待ってたんだよ。」

正直シロが帰ってきてくれてホッとした。

加地くんのペースに飲み込まれてしまいそうで怖かったから。

あたしには先生がいるからって、すぐに首を振ればよかったのに、なぜかそれが出来なかった。

相手が加地くんだからか、それとも……自分でも自信がなくなってきてるからなのか。どっちかな。

……分かんないな。


「…俺、飲み物買ってくる。」

「お、じゃあ俺のも。」

「ん、咲良は?」

「えっ……あ、いいや」

突然話しかけられて戸惑ってしまった。加地くんとはさっき久しぶりに話したばかりなのに。

どうしてあんなに普通に、今まで通りに出来るんだろう。
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