ねぇ、先生。
美術室の前に立つと、やっぱりいつものように胸が高鳴った。
美術室の中からは物音一つ聞こえない。
今日は美術部の活動はしてないのかもしれない。
―ガラ…
ゆっくりドアを開けると、やっぱり教室には人が1人もいない。
…篠原先生の姿も。
ドキドキして損した。
いつでもいるって言ったから、勇気を出してここまで来たのに。
…嘘つきだ。
―ガチャ…
「え……」
美術室から繋がる美術準備室のドアがゆっくり開いた。
「あ、咲良さん」
そこから顔を覗かせたのは、紛れもなくあたしが会いに来た人。