ねぇ、先生。
「…先生?」
今なら言える?
「ん?」
「あのね…」
「いいよ。」
「え?」
あたしが言う前に先生はいいよ。なんて言って。だけど抱きしめてるから先生の顔なんて見えなかった。
「俺は茉央ちゃんが傍にいてくれるならそれでいい。それで十分だから。」
だからもう言うな。
そういうことなんだろう。
「…うん」
先生は抱きしめる力を強くして、しばらく離さなかった。それが何だか小さな子供みたいで不安になる。
「先生、苦しいよ」
「ん…ごめん、もう少しだけ」
こんなの初めてだった。
先生はあたしといてもいつだって余裕で、こんなに弱気なとこなんて見せたことがなかったのに。
ここまで不安そうな先生を見るのは、何だか落ち着かなかった。
自然と先生の背中に回った手の力が強まった。ギュッとシャツを握ると、少しだけ落ち着いた気がした。