ねぇ、先生。
「やっと来てくれた」
嬉しそうに笑う篠原先生。
「おいで」
無理かもしれない。
この気持ちを消すのは。
だって、こんなにもドキドキして苦しくて、涙が出そうになるんだもん。
これって、恋でしょ?
手招きされるがままに、美術準備室に入っていく。
初めて入ったこの場所は、絵の具独特の匂いに包まれていた。
「…先生って、いつもここに1人でいるんですか?」
あまり広くはないけど、1人で絵を描くには寂しい気がした。
「部活がない日はそうだね。ん、座って」
美術室にしかないであろう、木の椅子を持って来て座るように促す。
素直にそこに座ると、先生は自分も椅子に座って絵を描き始めた。
「寂しくないですか?」
あたしがそう聞くと先生は少し驚いた顔をした後、あはは、と笑う。
ほんと、のんびりした人だ。