ねぇ、先生。

「…どうすんの?」

「手放すつもりはないけど」

迷いなく言い切った蓮に、少なからず俺の方が動揺していた。

そりゃそうか。茉央ちゃんを狙ってる男がいんのに、今手放せるかって話だ。

だけどさ、蓮。

俺、素直に賛成してやれねーよ。


「お前自分の教師って立場と茉央ちゃんどっちが大事なんだよ。」


お前には教師って立場があって、それは今だけとかじゃなくこれからずっと変わらないんだぞ。

何も自分から捨てることねーだろ。

茉央ちゃんとだって、これから先ずっと続くとは限らない。だったらもっと先を見た方がいい。

そう言おうとしたときだった。


「茉央ちゃんに決まってるじゃん。」


しっかりと俺を見据えて言った蓮に迷いは少しもなかった。その目に俺に対する怒りが含まれてるのが分かる。

ここまで怒りを露わにした蓮を見たことがなくて、そのあとの言葉が続かない。


どっちが大事かなんて、聞き方を間違えた。

そう言えば蓮は当然怒るって分かっていたはずなのに、どうしてこんな聞き方をしたんだろう。
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