ねぇ、先生。

「お前ら、朝から噂だ何だで騒いでるみてーだけどな、噂はあくまで噂だ。んなこと信じてる暇あったら受験勉強でもしてた方がまだ賢いぞ。」

入ってくるなりそう言った中村さんは、何食わぬ顔でHRを始めた。

…さっきのは中村さんなりのフォローなんだろう。きっと気にしてくれてるんだ。

「シロ、さっき何て言おうとしたの?」

「ん?あぁ…何でもない。」

そう言ったっきり前を向いてしまったシロに、あたしはもう何も言えなかった。


テキパキと要件を伝えていく中村さん。

全ていい終わった後に全体を見渡して、チラリとあたしを見た。

「咲良、放課後大学の資料取りに来い。」

「え…」

資料?何の資料?

「いいか、忘れんなよ。」

状況を把握出来なくてキョトンとしたあたしに中村さんは、釘を刺すようにそう言って、HRを終わらせた。

あたしが前を向いてる間、先生は一度も目を合わせなかったのに、今あたしをジッと見つめてた。

ちゃんと話をしなきゃ、なんて思ったのは先生の目が少し不安げだったから。

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